後遺症に対するボツリヌス療法

重症のベル麻痺・ハント症候群では、発症後6~12か月経過するとまぶたと口が一緒に動く病的共同運動、痙攣(けいれん)やひきつれなどの後遺症を残すことが少なからずみられます。特にハント症候群では重症の後遺症が残ることが多いです。
症状の重い患者さんは、口を動かすと眼が閉じてしまい、特に会食や車の運転などに支障を来たします。病的共同運動やひきつれの治療に対し、リハビリテーションや表情筋切除術などの外科的治療も行われてきましたが、一般に普及するにいたっておりません。最近、顔面痙攣(片側顔面痙攣の項を参照してください)の治療に用いられるボツリヌス毒素が病的共同運動の治療にも応用され、良好な成績が報告されています。この毒素は、筋肉に作用して筋の収縮を抑制する効果があり、その効果持続は2~5ヵ月とされています。

 治療法:外来通院で治療できます。細い注射針を用いて、眼・口周囲の皮下・筋肉内に数箇所注射します。数日後から効果があらわれ2~5ヵ月程度持続します。そのため3ヵ月から7ヵ月で再投与が必要となります。ボツリヌス毒素投与に当たっては、使用医師登録などの手続きが必要なため、実際に治療を行っている病院は限られております。